不器用な僕たち
「愛のない生活ってのは人間性を変えてしまうもんだな」
僕と入れ替わるようにパソコンの前に座った浩平が、マウスで画面をスクロールさせながらボソッと言う。
さっきまで僕が見ていたファンサイトのBBSに視線を向けたまま、浩平は言葉を続ける。
「俺はあの事を思い出すたびに思うよ。笹峰涼って男は、とんでもなく不器用なんだなって」
「なんだよ、不器用って」
「俺だったら女も仕事も同時進行させる自信がある」
座ったままの回転イスをぐるりとこちらに向け、浩平は言う。
「もう、解禁になったんだろう?迎えに行ってやれよ」
「………」
「な?」
「……もう……遅いんだよ」
僕はうつむいて、独り言のように呟いた。