不器用な僕たち
◆雅人 side◆
◆雅人 side◆
「おっ、杉本じゃん!また違う男連れてるぞ」
「あいつ、いつか絶対刺されるぜ?……おい、雅人。おまえ幼なじみだろ?ガツンと言ってやれよ」
就職課で求人票を物色している手をぴたりと止め窓の外を見ると、杉本千亜紀が男と一緒に楽しそうに歩いていた。
そんな光景を冷めた目で見ながら「関係ねぇよ」と、俺は再び求人票を物色し始めた。
――杉本千亜紀。
俺の隣りの家に住む同い年の幼なじみ。
22歳とは思えないほどの童顔と、それに反したナイスバディ。
そのギャップが男心を魅了させてしまうのか……。
あいつの『彼氏いない歴』は最長で1週間、最短で30分だった。
もちろん付き合った男は数知れず。
口の悪い人間……特に一部の同性からは『男喰いの千亜紀』とまで言われている。
昔は一途なヤツだったのに、あの出来事が千亜紀をガラリと変えてしまった。
同時に、あの出来事は俺と兄貴の関係までもを崩してしまったんだ。