不器用な僕たち

千亜紀はヘラヘラ笑いながらホウキを引っ込め、窓枠に頬杖をついて話し始める。


「ね、涼ちゃんは?」

「あ?仕事に決まってるだろうが」

「何時ごろ帰ってくる?」

「知るか!」


兄貴はごくごく普通の営業マンで、家に帰って来る時間なんて決まっていない。

早く帰って来るときもあれば、接待やらで午前様になることもある。


「つまんないなぁ。あっ、ねぇ、涼ちゃんたち、今度いつライブするの?」

「知らねぇって!俺は兄貴のマネージャーじゃねぇし」

「兄弟なんだから知ってるはずよ?」

「……幼なじみなんだから自分で聞けよ」


千亜紀が兄貴に聞けないことを承知で俺は言う。

兄貴は高校の頃からバンドをやっていて、その時のメンバーと未だに活動している。

アマチュアながらも地元では結構人気があって、兄貴たちのバンドのライブチケットはあっという間に完売してしまうほどだった。

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