不器用な僕たち
「へっ?千亜紀?」
「うん。あいつ、学校ではかなりモテるんだぞ?」
『かなり』という部分は嘘だけど、千亜紀はそこそこモテ女の部類に入っている。
兄貴はきょとんとした顔で、さらりと言ってのける。
「へぇ、すごいな。僕はそんな幼なじみを持って鼻が高いぞ」
ばーっっっか!
気付けよ、いいかげん。
恋愛の曲ばっか作っているくせに、実生活では鈍感すぎるぞ。
千亜紀はずっと兄貴のことが好きなんだよ。
毎年渡しているバレンタインのチョコ。
毎回決死の覚悟で「本命」だって言ってんのに、頭撫でて「ありがとう」なんて、子供扱いすんじゃねぇよ。
「涼ー!浩平くんが来てるわよー?」
鈍感な兄貴を睨むこと数分。
1階からお袋が大きな声で兄貴を呼ぶ。