不器用な僕たち
「なに?バンドの練習?」
俺が聞くと、兄貴は顔をしかめて首を傾げる。
「いや、今日は練習はしない日のはずなんだけど…」
「なんだろな、浩平くん」
「さぁ?」
そう言って兄貴は何度も首を傾げながら部屋を出て行った。
階段を降りる兄貴の足音を聞きながら、俺は自分の部屋に戻り、千亜紀の部屋の窓をホウキでノックする。
勢いよく窓を開けた千亜紀は、何かを期待しているようで顔が緩みきっていた。
「……おまえが期待するようなことは一切ねぇぞ」
「………」
「あっ、おい!待てよ!」
窓を閉めようとした千亜紀を慌てて呼び止めると、千亜紀は不機嫌そうな顔で振り返った。
「なによ」