不器用な僕たち
やっぱりみんな、諦め切れなかったんだろう。
僕も含めてメンバーの意見はすぐに一致した。
『話を進めてもらおう。プロとしてやっていこう』
上京する前日、僕は千亜紀を訪ねた。
10歳も年下の、妹のような幼なじみの千亜紀。
彼女の僕に対する真剣な思い。
僕はどうしても千亜紀をそんな目で見ることはできなかったんだ。
「明日、出発するから」
千亜紀の部屋に入るのは、どれぐらい久しぶりだろう。
記憶に残っているのは、真新しいランドセルを背負った幼い千亜紀に勉強を教えていた高校生の僕。
「……うん。遠くに行っちゃうんだね」
「まぁ、場所は遠いけど。千亜紀と僕の関係は何も変わらないから」
中学生になって少し顔立ちが大人びてきたけれど……。
でもやっぱり、23歳の僕から見れば、千亜紀はまだまだ子供だった。