不器用な僕たち
「桂木のこと、本気なのか?」
「当たり前でしょ。優しいし、どこかの誰かさんみたいに嘘つかないし!」
俺は『どこかの誰かさん』をスルーして、フッと鼻で笑う。
いつもならそんな俺の仕草を目ざとく見つけては文句を言う千亜紀なのに、『どこかの誰かさん』が出てきた途端、気にもしなくなる。
「て言うかさ、雅人も彼女つくれば?」
「……いらねぇよ、んなもん。面倒くせぇ」
「あら、愛のある生活は楽しいわよ?」
「金のかかる生活の間違いじゃねぇの?」
手当たり次第男と付き合う千亜紀とは正反対に、俺は長いこと彼女というものがいない。
彼女という存在ほど面倒なものはないとハッキリ思ったのは、今から5年前の高校2年の時だった。
1つ年下のかわいい彼女と1年弱付き合っていた。
その間に訪れた、誕生日・クリスマス・バレンタインというカップルが愛して止まないイベント事。
かわいい彼女がねだった高価なプレゼントを、俺はバイトで貯めた金をはたいてイベント事にプレゼントした。
もちろん俺にもそのお返しはあって当然だろうと、漠然と思っていたのに。