不器用な僕たち
ランドセルを背負い、寝癖がついたまま学校に走る幼い千亜紀。
『涼ちゃんっ、遅刻しちゃうっ!』
『おいで、送ってあげるから』
半べそかいている千亜紀を自転車の後ろに乗せて小学校まで送っていた高校生の僕。
小学校まで遠回りして行くから僕も遅刻になるけれど、それでも千亜紀を送って行っていた。
……そういえば一度。
中学校に入学したばかりの千亜紀が同級生の男と一緒に帰っている姿を見たことがあったな。
その時の僕は社会人になっていて、運転していた車を止めて千亜紀に乗るように促したっけ。
そして車の中で「まだ中学生だろう?男と付き合うなんて早すぎるぞ」って、保護者気取りで説教した。
『彼氏じゃないよ。同じクラスの友達。涼ちゃんが好きなのに、他の男の子と付き合うわけないでしょう?』
千亜紀は無邪気に笑って、僕にそう言った。