不器用な僕たち

『涼ちゃん、頑張ってね。身体に気をつけてね。あと……、たまには帰ってきて』


……泣いている。

千亜紀は涙声になって、矢継ぎ早に話を進めた。

僕は一言一言をきちんと聞いて、「うん、うん」と返事を返す。


『私、ずっと応援しているから。涼ちゃんたちは絶対に成功するから』


気付かなかったな。

デビューが決まってから、こんな言葉いろんな人に言われたけれど、千亜紀に言われると一番自信が持てるなんて。


「うん、ありがとう」

『………うん』

「千亜紀。おじちゃんとおばちゃんの許可が出たら、夏休みに東京においで」

『えっ?』


千亜紀の驚いた声を聞いて、僕は頭が真っ白になった。


今、何を言った?

言うつもりなんてなかったのに、口をついて自然に出てきた言葉。


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