不器用な僕たち
――…こいつ、絶対に1人で行く気だ。
「千亜紀……」
「なっ、何よ」
急に黙り込んだ俺を前に、千亜紀の態度も一変する。
俺はマジメな態度で千亜紀を諭す。
「兄貴はもう、一般人じゃないんだぞ?もしお前がたった1人で兄貴んとこに行ったら、『恋人発覚!』って、あっという間にマスコミの餌食になるんだぞ?お前も、兄貴も」
千亜紀は単純な女で『恋人』という言葉にピクリと反応する。
「恋人…!」
「そうだろ?年頃の女の子が1人で兄貴の所に行くんだぞ?」
「…そっか、そう、そうよね!」
「だから、カモフラージュのために、俺も付いて行くんだよ。俺と一緒だったら兄妹でも通用するだろ?」
「やだ、雅人ったら頭いい!」