不器用な僕たち
兄貴に会いにやって来た東京。
デビューライブを控えていた兄貴は忙しくて、一緒に過ごせるのは夜だけだった。
「……誰も買わないねぇ」
昼間、俺と千亜紀は近所のCDショップに毎日のように足を運ぶ。
新譜CDコーナーに『メジャーデビュー!』と派手に大きく書かれたポップと共にベルマリのCDがあった。
毎日のように来ているけれど、未だにベルマリのCDを買っていった人を見ない。
やっぱ、地元じゃないから厳しいよな。
CMとかドラマでタイアップされたならまだしも、ベルマリの知名度ゼロの東京でいきなりデビューシングルが売れるなんてさ。
「もうっ、イライラする!」
「お、おいっ!」
陰から様子を伺っていた千亜紀が俺の手をぐいと引っ張って、ベルマリのCDが置かれているところへ無理やり連れて行く。