不器用な僕たち
「どうしたんですか?」
少し沈んだ表情にも見えた望月さんに声をかける。
望月さんは僕をちらりと見て、またうつむく。
嫌な予感…――。
それは口を開いた彼の言葉で的中した。
「…ゼロなんだ」
「えっ?」
「客がいないんだ」
「…客が…ゼロ?」
開演まであと10分。
それなのに観客がいない。
この東京で知名度もない僕たちのデビューライブ。
客が少ないことぐらい覚悟していたけれど……。
それがたった1人の客さえもいないなんて。