不器用な僕たち
「ライブ終わるまで営業してくる。みんな、頑張れよ」
望月さんは深く溜息をついた後、立ち上がり、控え室を出て行った。
デビューライブまでの間、僕たちも望月さんも知名度を上げようと頑張ってきた。
大型商業施設でのプロモーション巡り。ラジオ出演。
夕方のテレビの情報番組でほんの数分だけ出演して宣伝したこともあった。
これだけやったのだから、満員とまではいかなくても何人かの客はいるだろうと思っていた。
「涼…誰もいないって…」
「あぁ」
ドラムの慎也が不安そうな顔で僕を見る。
「まぁまぁ!」
ムードメーカーでもある浩平は、そんな僕たちの背中を思い切り叩いた。