不器用な僕たち
きっと、もうすぐ、あのライブハウスのドアが開いて、客が入ってくる。
そして芋づる式に、どんどん客が入ってくるんだ。
もうすぐ…もうすぐ……。
歌いながら、僕の視線は何度も入り口のドアへと向けられる。
完璧な演奏。この音が外に少なからず漏れているはずだから、その音と、望月さんの懸命なプロモーションで、きっと、客が来るはずだ。
きっと…きっと……。
なのに――……。
『ありがとうございましたー!』
がらんとした無人の客席が埋まることなく、僕たちのデビューライブは幕を閉じた。