不器用な僕たち

ライブが終わって、メンバー全員が住んでいるマンションまでの道のり。

僕たちは一言も話をしなかった。

真っ暗な道を、ただ黙々と歩き続ける。



「まぁ、なんだな…。これでベルマリは怖いもんなしってことになったな」



重苦しい空気を壊すように、浩平が笑って言う。



「そうだよな。デビューライブの動員数ゼロなんて貴重だぜ?」

「いつか、『えっ!そんなに人気なかったんですか?』なんて言われるはず」

「ははっ。無人のライブ、写真に撮っておけばよかった」



渇ききった、上辺だけの笑い声。

無感情でも笑ってないと、やってられなかった。


きっと、ここにいる4人全員がショックを受けている。

分かっている、分かっていたことだった。


だけどさ……。

あまりにも、現実ってものは辛すぎる。

< 62 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop