不器用な僕たち
マンションに帰り着くと、雅人と千亜紀が大はしゃぎしながら出迎えた。
二人はベルマリのライブには来なかった。
僕が招待しなかったのと、二人そろって「ライブの成功をここで祈っている」とマンションから出ることを拒んだ。
動員数ゼロのデビューライブ。
二人はまだ、何も知らない。
「兄貴!どうだった?ミスらなかったか?」
「バカねぇ!あのベルマリの涼ちゃんよ?ミスなんてするはずないじゃん!」
ダイニングテーブルには、千亜紀が作ったと思われるケーキが置いてあった。
お酒の味も知らない二人が、僕のために買ってくれたシャンパンもあった。
お祝い体制、万全。
「ね、涼ちゃん。ライブどうだった?やっぱり、デビューライブともなると空気が違うでしょ?」
どうだった?
そう聞かれて、僕が用意していた言葉。