不器用な僕たち

マンションに帰り着くと、雅人と千亜紀が大はしゃぎしながら出迎えた。

二人はベルマリのライブには来なかった。


僕が招待しなかったのと、二人そろって「ライブの成功をここで祈っている」とマンションから出ることを拒んだ。


動員数ゼロのデビューライブ。

二人はまだ、何も知らない。



「兄貴!どうだった?ミスらなかったか?」

「バカねぇ!あのベルマリの涼ちゃんよ?ミスなんてするはずないじゃん!」



ダイニングテーブルには、千亜紀が作ったと思われるケーキが置いてあった。

お酒の味も知らない二人が、僕のために買ってくれたシャンパンもあった。

お祝い体制、万全。



「ね、涼ちゃん。ライブどうだった?やっぱり、デビューライブともなると空気が違うでしょ?」



どうだった?

そう聞かれて、僕が用意していた言葉。

< 63 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop