不器用な僕たち
『最高だったよ!』
『もう満員でさ、正直、緊張した』
興奮気味に話す自分をどこかで想像していたのに、それは空想のまま、あっけなく消えてしまった。
「…涼…ちゃん?」
「兄貴…?」
口を開こうとしない僕に、二人は不安そうに声をかける。
「悪い。ちょっと、着替えてくるわ」
話をすることができなかった。
雅人と千亜紀、そして地元で僕たちのことを応援してくれている人たち。
バックアップしてくれた事務所のスタッフや社長。
少しでも客を入れようとギリギリまで街中を走りまわったマネージャーの望月さん。
みんなの期待に、僕たちは応えることができなかったんだ。