不器用な僕たち

『万が一2ndがコケても、曲のストックが増えるからね』



たくさんの曲作り。

バンドの内情なんて分からない私が心配すると、涼ちゃんはいつも笑って同じことを言う。



「涼ちゃん、体には気をつけてよ?」

『大丈夫。睡眠・食事だけはしっかり摂ってるから』



まるで、恋人同士のような会話だ。


デビューライブの夜。

涼ちゃんに抱きしめられた。


不思議なことに、抱きしめられた時は何とも思わなかった。

まるで、それが当たり前になっているような、そんな錯覚にさえ陥っていた。


涼ちゃんの体が離れた後になって、突然ドキドキし始めて。

涼ちゃんを好きだという気持ちが急に加速して、私、泣きそうになったんだ。


でもね…。

ここで思いをぶつけちゃダメだって、必死にブレーキをかけた。

< 69 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop