不器用な僕たち
『万が一2ndがコケても、曲のストックが増えるからね』
たくさんの曲作り。
バンドの内情なんて分からない私が心配すると、涼ちゃんはいつも笑って同じことを言う。
「涼ちゃん、体には気をつけてよ?」
『大丈夫。睡眠・食事だけはしっかり摂ってるから』
まるで、恋人同士のような会話だ。
デビューライブの夜。
涼ちゃんに抱きしめられた。
不思議なことに、抱きしめられた時は何とも思わなかった。
まるで、それが当たり前になっているような、そんな錯覚にさえ陥っていた。
涼ちゃんの体が離れた後になって、突然ドキドキし始めて。
涼ちゃんを好きだという気持ちが急に加速して、私、泣きそうになったんだ。
でもね…。
ここで思いをぶつけちゃダメだって、必死にブレーキをかけた。