不器用な僕たち

◇千亜紀 side◇


  ◇千亜紀 side◇


何よ、雅人のやつ。ムカつく。

久しぶりに声聞けば?ですって?

バカじゃないの?


雅人に手渡されたのは、涼ちゃんの自宅と携帯の電話番号だった。

私はメモをグチャグチャに丸めてゴミ箱に投げ入れた。


電話するわけないでしょう、あんな男に。

大好きで、信じていて、それは涼ちゃんも同じだと思っていたのに、あの日突然涼ちゃんは豹変してしまったんだ。


『一般人の千亜紀とは価値観違いすぎるよ』


今もしつこく残っている、涼ちゃんの最後の言葉。

表情のない冷たい笑顔で、涼ちゃんはバカにしたように私に言い放った。

あまりにも突然のことだったから、目の前で何が起きているのかすぐに理解できなくて、私は泣くことさえもできずにいた。


『うん、分かった』


涼ちゃんに泣きつくことも、理由を聞くこともできなくて、私は何事もなかったかのように、あの日涼ちゃんのマンションを出て行った。

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