不器用な僕たち

揉みくちゃにされる雅人を見て、身内じゃなくてただの幼馴染で良かったと、私は胸を撫で下ろしていた。



「千亜紀は涼さんに会えた?」

「ううん」



親友の久実ちゃんが、そっと耳打ちする。

久実ちゃんは私が涼ちゃんを好きなことを知っていて応援してくれている。



「寂しくない?」

「…正直、寂しい。でも、ベルマリの人気が上がっていくのは嬉しいんだよね。涼ちゃんが作った曲をたくさんの人が聞いてくれるから」

「涼さんの作る曲はホント、いいよね!」



作詞・作曲はすべて涼ちゃんがやっていて、私は涼ちゃんの才能に惚れ直してしまった。

主に作っている切ない恋愛の曲は、聞けば聞くほど胸を締め付けられる。

ストレートな表現を避けた歌詞。

そこにどんな意味が込められているのかを、涼ちゃんは絶対に公にしない。

聞く人が好きなように想像してほしいからって。

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