不器用な僕たち
会えると思っていたのに。
でも、そんなこと言っている場合じゃない。
あのトエダから声がかかったのだから、ベルマリが全国区になるチャンスなんだ。
「涼ちゃん、おめでとう!」
『えっ?』
遅れて出てきた祝福の言葉に、涼ちゃんは驚いた声を上げる。
少し黙った後に、笑いながら「ありがとう」という声が受話器を通して聞こえてきた。
『せっかく会えると思っていたのに。悪かったな、千亜紀』
「ううん、会えないのは残念だけど、それ以上に嬉しいことがあったからいいの」
…あれ?
『みんな未だに信じられないって顔してるんだ。今度…春休みに、また東京においでよ』
「うん、もちろん、行くよ」
……なに、この会話。