不器用な僕たち

2ndシングルがトエダのCMに起用されてから、ベルマリはあっという間に全国区になった。

観客ゼロのデビューライブは本当に『笑い話』で終わってしまった。


3ヶ月連続リリースのシングル、その後の1stアルバム、すべてが爆発的に売れた。

そして、初の全国ツアー。チケットは各会場とも即日完売とその人気ぶりを伺わせた。



「……あり得ねぇよ、こんなの」



兄貴は有名人になっても、マメに実家に電話を入れる。

俺はそのたびに、追っかけ連中の愚痴をこぼす。



『今度、事務所名義で公式サイトに書いておくよ。悪いな、イヤな思いをさせてしまって』

「俺は覚悟していたけどさ、千亜紀にまで及ぶなんて……」

『千亜紀も!?』



兄貴のひどく驚いた声。


なぜか、敏感に反応する。

千亜紀を気遣う兄貴の言葉。その言葉ひとつひとつが、幼馴染に対するものじゃなくて、好きな女に対するもののように感じる。

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