不器用な僕たち
「…兄貴って、千亜紀のこと好きだろ?」
『はぁ!?な、何言ってんだよ』
ビンゴ。
昔から兄貴は、核心を突かれると言葉に詰まるんだよな。
しかもその、慌てた口調。
たった一人の弟が気持ちを見抜いているのに、当の本人は真っ向から否定する。
『千亜紀はただの幼馴染だよ。好きだけど、そういう好きじゃないし』
「……バカ」
『えっ?何て言った?』
「何でもねぇよ。じゃ、俺、今から千亜紀のトコに行くから切るな」
ちょっとした意地悪。
千亜紀のところに行く予定なんてないくせに、わざと強調して言ってみせる。
『何しに行くんだ?勉強か?』
「いや、遊びに行くだけだよ」
『何して遊ぶんだよ。おまえ、宿題はないのか?』
「もう終わったし。じゃあな!」