不器用な僕たち
朝の通学路。
先に家を出た俺の後を追いかけてきた千亜紀が、いつものように自分の腕を俺の腕に絡ませる。
胸がドキドキして。
俺は強引に千亜紀の腕を振り払った。
「あらあら、お年頃なのね」
千亜紀は茶化す。
俺がもし、千亜紀を好きだと言えば、どうなるんだろう?
きっと、今バランスが取れているこの関係が大きく崩れてしまう。
うまくいきかけている兄貴と千亜紀の仲も、ぎくしゃくしてしまうんじゃないか?
「そういえば、追っかけ減ったよね!ベルマリの公式サイトにね、『お止めください』って書いてあったよ?」
「あぁ、兄貴が……」
兄貴のことを話そうとした自分を一瞬、恨む。
兄貴の「あ」の字を出してしまえば、そこから千亜紀の『涼ちゃんトーク』が始まる。