不器用な僕たち
「…望月さん、開演、19時ですよね?」
「そうだけど……」
飛行機を使えば、開演時間にギリギリ間に合う。
運よくチケットが取れればの話だけど……。
「リハなしでやるつもりか?」
「…はい」
「望月さん、涼の代わりに俺が歌うよ」
浩平が僕と望月さんの間に割って出る。
望月さんは深い溜息をつくと、片手に持っていた携帯でどこかに電話をかけた。
「……絶対に開演までには戻って来いよ。今、タクシー呼んだから」
「望月さん……。ありがとうございます。開演までには必ず戻ってきます」
こんなこと、本来なら許されない。
プロとしての自覚が足りないのだと思った。