不器用な僕たち
肉親が死の淵を彷徨っていることを知りながらも、舞台に立つアーティストもいる。
そして、死を知らされてもなお、プロ意識を貫き通して、亡くなった大切な人の元へと駆けつけない人だっている。
千亜紀は血の繋がりさえもない、ただの幼馴染。
事故に遭って意識不明の重体。
そして今の僕はライブを控えている身。
『あれでもプロなのか?』と後ろ指さされたっていい。
僕は…、千亜紀のそばに行かなきゃならないんだ。
――…千亜紀……。
『マリー』がいなくなって、不吉なことが起こる。
嫌な予感はしたけれど、『マリー』はそこまで意地悪ではなかったようだった。
「兄貴!」
「雅人…、千亜紀は!?」
飛行機のチケットもすんなりと取れて、空港から病院まで道が混雑することもなくスムーズに着いた。