不器用な僕たち

肉親が死の淵を彷徨っていることを知りながらも、舞台に立つアーティストもいる。

そして、死を知らされてもなお、プロ意識を貫き通して、亡くなった大切な人の元へと駆けつけない人だっている。


千亜紀は血の繋がりさえもない、ただの幼馴染。

事故に遭って意識不明の重体。

そして今の僕はライブを控えている身。


『あれでもプロなのか?』と後ろ指さされたっていい。

僕は…、千亜紀のそばに行かなきゃならないんだ。


――…千亜紀……。



『マリー』がいなくなって、不吉なことが起こる。

嫌な予感はしたけれど、『マリー』はそこまで意地悪ではなかったようだった。



「兄貴!」

「雅人…、千亜紀は!?」



飛行機のチケットもすんなりと取れて、空港から病院まで道が混雑することもなくスムーズに着いた。

< 91 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop