不器用な僕たち

ICUに向かいながら、『マリー』に感謝する。

同時に、欲張りだけれど、どうか、あと一つ大事な僕の願いを聞き届けてくれと必死に祈る。



「……千亜紀…」



人工呼吸器を付けられた千亜紀の身体は無数のコードが繋がれている。

青白い顔。

呼びかけても反応すらしない。



「ごめん…、俺のせいなんだ…」



肩を落とした雅人がボソボソと呟くようにして話し始める。



「学校に行く途中…、俺、ちょっと機嫌悪くてさ。一緒にいた千亜紀を振り払うようにして、赤信号の横断歩道を渡ったんだ。千亜紀…、俺の後を追いかけてきて…」

「雅人…。自分を責めるな」

「……けどよ…」



いつも負けん気の強い、僕のたった一人の弟は涙をこぼす。

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