不器用な僕たち
「……涼ちゃん!?」
「おばちゃん!」
席を外していた千亜紀のお母さんが戻ってきて、ひどく驚いた顔で僕に声をかける。
「涼ちゃん、今、ツアー中じゃなかったの!?」
「えぇ、まぁ……」
「ごめんね、心配かけて…」
「いえ、千亜紀は…どうなんですか?」
「…千亜紀は…大丈夫よ。今は事故のショックで意識がないだけだって。脳も心肺も正常に機能しているから…って先生が…」
「そうですか…」
良かった…。
大丈夫だという言葉を聞いて安心したのか、雅人は嗚咽を漏らしながら泣き始めた。
「雅人、泣くなって。大丈夫だって言ったろ?」
「うん…、うん……」