子うさぎのお世話
「…ハル……」
ポツリとつぶやくと…また胸のモヤモヤがやって来る。
「うさたん…まさか、ハルとケンカとか…?」
うつむいた雪兎の態度を勘違いした秋良はさらに心配そうに雪兎の顔を覗き込んだ。
「ち…っ、ちがう…!」
慌てて顔を上げて、ブンブンと振る。
「何か怪しいなー…」
「~~~っ。」
疑わしげな視線をくれる秋良に思わずたじろいでいると…
「篠崎~。休憩交代!」
一人の男の子が現れて、秋良はそちらに振り返った。
「……!マジ?もーそんな時間っ?」
秋良はまだ疑いの眼差しを向けていたけど、クラスメートが休憩終了を告げに来たのでそれに気をとられたのか無理な追求はしなかった。
「うっわぁ~!ここまでくるとなんかもう存在自体が犯罪モノだよね。」
秋良を迎えに来たウサ耳執事はこれまた美形の顔をちょっと赤らめて、マジマジと雪兎を見た。
「………。」
雪兎は人見知りなのでジリジリと後ずさる。
「止めろよ~…来栖(クルス)。うさたんは《孤高の狼様》のだから。」
秋良がサッと間に入り庇ってくれる。
秋良の言葉に来栖と呼ばれたウサ耳執事は、やだなーと苦笑して
「この子藤間の彼女でしょ?手出す勇気ないって…!
いや…噂の彼女初めてまともに見たからさぁ…。かぁわい~♪」
そうニコニコ笑い、自分の着けているウサ耳を外すと……
雪兎の頭にポン!と着けた。
「……完璧!」
「……!?」
ウサ耳メイドになった雪兎を見ると満足そうに笑った。
「…ぷっ!」
それを見た秋良も思わず口元を押さえ必死で笑いを堪えている。
「じゃっ!俺は休憩だから♪子うさぎちゃん、藤間によろしく♪それいっぱいあるからあげる~。」
「………。」
ウサ耳じゃなくなった美形執事はひらひら手を振りながらさっさと立ち去ってしまった…。
「い…いらないよ…。」
雪兎は呆然と…そのつかみ所のない男の背中を見送った。