子うさぎのお世話

ナツとアキ

立っていたのは秋良だった。


いつにない険しい顔で棗を見ていた。



棗は慌ててグイと涙を拭いた。



「な…なによ……?」


ただ自分を見つめる秋良に動揺して棗は思わずうつむいた。


「………!!?」


「……一人で泣くなよ!」


そう言って、秋良は棗をギュッと抱きしめた。


「………っ!!」


堪えた涙がまた溢れる。


「……ハルとうさたんは大丈夫だよ。あの二人は生半可な恋とか…そんなの軽く超えてお互いに執着しまくってんだからさぁ…」


軽い口調で言って、棗の背中をぽんぽんと優しくたたく。


「………うん…っ」


その優しい秋良の声は棗の涙腺をさらに緩めたけれど……彼女の心を優しく落ち着かせてくれた。





そうだ。

こんなことくらいで切れるような二人じゃない。

棗と秋良は親友の顔をそれぞれ思い浮かべた。


それは……幸せそうに微笑みあう二人の顔だった。
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