子うさぎのお世話
こんな男になりたいと思った。
ただ一人を大切にして
ただ一人に大切にされたら……。
ぼんやり立ち尽くしそんなことを思っていると
「あれ~っ?アキじゃん!」
自分の名を呼ぶ女の子の声に面食らった。
「……!?な…棗?」
一瞬、我が目を疑った。
自分に声をかけ、教室の中で藤間の彼女の隣に座っていたのは
彼の幼なじみ。
五十嵐 棗。
「なにやってんの?」
教室の入口までやって来た棗は、不思議そうに秋良に問いかける。
思わず、バカみたいに見とれてしまった。
だってほんとにこれはあの棗なのだろうか?
子供の時、男3兄弟に囲まれた末の彼女は…
大人しかった秋良を子分のように振り回す…自身も男なんじゃないかってくらいのやつだったのに…!
それが今ではすっかりスタイルのいい美人だった。
どこからどう見ても女の子にしか見えない。
「ちょっと…何、魂抜いてんのよ!」
呆けたように立つ秋良に、聞いてんの!?と、怒鳴る棗を見つめながら
「俺は、何か楽しくなってきたぞ…っ!」
棗ににっこり笑いかけた。
棗は訳わかんない…と呆れて見ている。
とりあえずこの3人の輪に加わってお友達になってもらわねば!
そんでもって
遊んでもらってた女の子達とさよならしようと思いつつ
華やかな3人組のいる教室に足を踏み入れたのだった。