子うさぎのお世話
きっかけは些細なことだった。
時春には9つ年上の従兄弟がいて、その日は彼の家に両親と一緒に遊びに来ていた。
時春はその日も雪兎と一緒で…
こともあろうか従兄弟の英彰(ヒデアキ)が、人形のように愛らしい雪兎に興味をもったのだ。
雪兎は度々他人の視線を惹き付けたけど、人見知りの激しい彼女がそれに応えたことは一度としてなかった。
だけど…その日は違った。
時春の父方の従兄弟、藤間英彰(トウマヒデアキ)は当時5歳の彼らの9つ上の14歳。
親戚の中で一番時春と顔立ちが似ていて、まるで兄弟のようだった。
性格は真面目で温厚で人当たりがよかったが、どこか一筋縄ではいかない雰囲気を持っていた。
『…おにぃちゃん、はるちゃんににてる…』
『従兄弟だからね。雪兎ちゃんはすごく可愛いね?』
雪兎が初めて時春以外になついたのだ。
穏やかな話し方で時春によく似た顔立ちだったのも理由の一つだったのだろう。
けれど、あの時のどろどろとした気持ち……。
幼い時春の初めて感じたそれは
…嫉妬だった。