月と太陽

「あ!ちょっと琴音聞いてよ!!萌乃がアールグレイを、いや、元はといえば美月がディーゼルのコートに、」

「14時に麻布十番だよ。もう出ないと。
もう…可那ちゃん遅刻魔なんだから。」

琴音は、しょうがないわねえ。と言ってため息をつく。
みるみる可那の眉間に深い皺が出来ていき、やがて目がひし形のように変わった。


「キィィィィ!!!もう!!!コート!あたしのせいじゃな…
もう嫌!!あたし行かないから!!
だいたい打ち合わせとか言っても所詮副業じゃない!キャンセルよ!」

「副業というより目隠しよね。嘘つき企業。」

「なにアンタ!iPod中じゃなかったの!
てか嘘つき企業とか失礼この上無いわね!
こっちの仕事もちゃんとやってるじゃない!」



この三階に『K's エンタープライズ』という企業が法人登記されている。
片桐を除いた5人がこの会社の従業員ということになっており、
可那が社長の肩書きを持っている。

業務内容はwebデザインだが、
最近は広告デザインなどへの参入を目論んでいて、今日は大手広告代理店と大手出版社との打ち合わせだった。

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