月と太陽
「名前は?娘。」
「産まれてすぐに勝手に出生届け出しましたね。名前はね、『聖華』です『せいか』、『ひじり』に『華やか』で『聖華』へへっ」
カズヤは手にしているワイルドターキーのフルボトルを持ち神野にオーバースローする真似をした。
「重っ」
カズヤはバーボンの瓶を左手に持ち代えて神野に放った。
手首の十字架が光る。
瓶は、ふわっとやわらかい弧を描き神野の右手に吸い込まれた。
「ヤクザ者だった奴が熱心なカトリックだとは笑える。」
「いえプロテスタントです。日本では圧倒的にプロテスタントが多いんですよ。」
「ああ、そうなのか。」
神野はカズヤの左手首を見ながら頷いた。
「あ、ロザリオですか?これはおもちゃです。聖華とお揃いです。へへ」
「いや、そういうことじゃない…まあ…いいか。」
神野がワイルドターキーのコルクを抜くと、ポンッと低音の小気味良い音がコンクリートのスペースに響いた。