月と太陽
表参道から青山通りを渋谷方面へ進み、カレーチェーン店を過ぎた信号を左折してすぐ骨董通り、ひとつ目の信号の二軒手前にこのカフェがある。
客は10代の少女が三人だけだった。
「パンケーキをチョコとバターとメイプルたっぷりで。」
「私も。」
「ふふっ、あんた達なんだかんだ言っても味覚は歳ソーオーだね。」
「いいから萌ちゃんオーダー」
「あ、あたしあれ!生クリームたっぷりのタルト!カシスたっぷりかけてね!」
「萌ちゃんもかなりの甘党だよね。」
「あたしはお酒かけてますから。大人の女なの。
二人はまだ少女ね。あたしはどちらかといえば女性。」
頬杖をつきながら萌乃はどこでもない宙を、目を細目ながら見て二人と宙に言った。
「カシス程度ではしゃいでも痛々しいよ。
カシスなんて下心満載の客にアルコール進められて酔いたくないキャバ嬢が飲むものよ。
甘酒よりよっぽど子供の飲み物、ていうよりシロップだね。メイプルと同じ。」
メニューを見ながら美月がボソボソと、それでも聞こえるように言った。
キャバやってみたーい、と検討違いな萌乃を無視してリリがPCをテーブルに置いた。