君に笑顔を ~地味子に恋したイケメンのお話~
「なんだよ…、また忘れたのか?」

「そうじゃなくて、そもそも携帯を持ってないの」

「え? マジで?」

瑞希は悲しい顔でコクッと頷いた。
今までは携帯がない事を何とも思っていなかったが、今はそれが恥ずかしく、情けない気持ちの瑞希だった。

「厳しい親なんだね…」

(そうじゃないんだけど…)


「じゃあ、これしかないな?」

そう言って、達也は右手で瑞希の小さな左手を握った。

瑞希が見上げると、達也は照れ臭そうな表情で瑞希を見つめ、ニコッと微笑んだ。

「さあ行こう。俺からはぐれるなよ?」

「うん」

二人はしっかりと手を繋ぎ、2階の映画館へと歩いて行った。
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