君に笑顔を ~地味子に恋したイケメンのお話~
玄関を出ると、「先生!」と達也が春田を呼び止めた。

「バッグを持ってくれますか?」

「それは構わないけど…」

達也は2つのバッグを下に降ろすと、瑞希に近付きスッと瑞希を抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこだ。

「さすがー。手は大丈夫なの?」

「はい。ほら?」

達也は右手は手首までしか使わずに瑞希を抱えていた。

「頼もしいこと。よいしょっと。重ーい!」

春田はさも重たそうにショルダーバッグを持ち上げた。

実際、参考書や着替えや諸々がぎゅうぎゅう詰め込まれているからかなり重いのだが。

「すみません…」

「いいのよ、気にしないで?」


(あのバッグがなければ、こんな事にはならなかったのにな…)
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