君に笑顔を ~地味子に恋したイケメンのお話~
それなのに、達也を呼び止めたばっかりに、それを知られる事になってしまった。

寂しげな達也の後ろ姿に、瑞希は思わず『待って?』と言っていた。

今呼び止めないと、二度と達也が振り向いてくれない気がしたから。二度と達也が笑顔を向けてくれない気がしたから。
そして、それは絶対に嫌だと、瑞希は思ったから…



「どんな仕事なんだい?」

「本屋さんです。あ、あそこです」

瑞希が指差した先を見ると、駅前ロータリーのちょっと先に大きな赤い字で“本”と書かれた看板があった。

「ふーん、こっち側にも本屋さんがあったんだなあ」

「はい…」

「中山さんは何処にいるの? よく知らないけど、持ち場とかあるんでしょ?」

「あ、はい。私は2階の担当です。参考書とか実用書のコーナーです」

「そう? じゃあ、今度参考書とか問題集を買う時はこっちに来ようっと」

「え?」

「嫌かい?」

「そ、そんな事はないですけど…」
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