ゆー君のゆーうつ。
『……え?……』
この子は、オレの言っていることの意味がわかっていないのだろうか。
オレの言葉に対して、不思議そうな顔をしていた。
どうやら、あの言葉だけでは足りなかったみたいだ。
「ほら、高校に入学して、はじめて話した先輩がオレ。だから憧れっていうか、まぁ、慕ってくれるってことかなって。それはオレも嬉しいよ」
『せんぱいも嬉しいのっ?だったら未来も嬉しいっ!』
「……え?あのね……」
あれ?だから、オレ、君のこと牽制しなかったっけ?
と、いうかもしかして、好き、って恋愛感情じゃなくてご飯やぬいぐるみが好き、といったあのレベル?
『きっとね、未来が桜の木の下にいたことも、せんぱいが声をかけてくれたことも、ぜーんぶ、運命だったんだって思うんだ!
だからね、未来はせんぱいのこと、あっという間に好きになっちゃったの』
……もしかして、もしかしなくても、この子はバカなのかもしれない。
18年生きてきて、こんなことは初めてだ。
おバカで小さな、小動物のようなカノジョ。
吉田未来、ね。
オレはこの日、はじめて頭の中にカノジョの名前を刻んだ。