踊れ その果てで
 そうだ、恋人を亡くしてから俺は笑う事も泣く事もなくなった。

 もう、何もかもが疎(うと)ましく憎かった。

 のうのうと生きている自身にさえも、表しようのない感情が宿った。

 何度、己の体に刃を走らせただろう。

 突き立てただろうか──なのに、死ぬまでの傷を与えられない。

 そんな自分をさらに憎んだ。

 そうしている間に心は凍り付き、死を求めてこの仕事に就いていた。

 幾度となくハンターと同じターゲットを狙い闘ってきたが、まだ生きている。

 何故、死ねない……苛立ちが心を埋め尽くす。

 そんな事を繰り返し、戒は悪夢を見続けている。

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