踊れ その果てで
歩きながらヘッドセットを装着し、扉の前に立つ。
いつでも浮かぶのは、かつての恋人の微笑み──救えなかった自責の念が襲う。
戒が悪い訳ではない、あれは仕方のない事故だった。
彼が特殊部隊に勤務していた頃、日本を離れる仕事に就いた時だ。
彼女が出かける時は、いつも戒が車の運転をしていた。
彼がいない時は、彼女は自分で運転するのだが、彼女が両親の家に向かう途中、対向車線を走っていた車が信号無視で右折してきた。
彼女はそれを避けきれず、まともに相手の車と衝突したのだ。
帰ってきた戒に見せられたのは、冷たくなった恋人の遺体だった。