踊れ その果てで
 娘の死に、誰かを恨まずにはいられなかった事くらい解っている。

 彼女の母は彼に多くは語らなかったが、やはり憎まずにはいられなかったと思う。

「!」

 そんな物思いにふけっていた戒の頬に、冷たい感触が伝わり我に返った。

「チッ……」

 雨まで降ってきやがった。

 口の中でつぶやき、重たい扉の向こうに姿を隠す。


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