踊れ その果てで
 少し顔をずらして確認すると、男の1人が手にしているハンドガンの銃口を自分の頭に向けている。

 どちらも20代半ばほどだろうか、顔立ちは似ている。

 やはり兄弟のようだ。

「……っ」

 自ら死ぬつもりか──戒は小さく舌打ちした。

<それ、よく見せてよ>

「むやみに顔は出せん」

 ヘッドッセットからの真仁(まひと)に、煩わしそうに応える。

 あの男の言動から察するに、引鉄(ひきがね)は引かれるな……それが出来るであろうその男が、戒には少し羨ましく思えた。
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