踊れ その果てで
 戒は、なんとなく灰色の建物の1つに足を踏み入れた。

「……」

 何もない、ただ四角に造られただけの部屋──そこには家具も家電も、およそ人が生活するようなものは置かれていない。

 ただ食べ、眠るだけでいいからだ。娯楽など与える必要は無い。

「……?」

 その部屋の中心に溜まっているゴミに目を留め、薄暗い空間に目を凝らして近づく。

「チッ」

 ヘッドセットの調子が悪いらしい、雑音のあと画面が消え音も途切れたようだ。

 さらに警戒を強め、ゴミに近寄る。

 紙くずを足でよけてしゃがみ込んだ。

「こいつは……」

 ゴミの中にあるそれを凝視して、目を細めた──


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