踊れ その果てで
「は……」
戒の口元から、自然と笑みがこぼれていた。
「生物は常に生き残る術(すべ)を模索(もさく)する……か。よく言ったもんだ」
俺が生まれる前に創られた映画のセリフだが、数学者の役だった俳優が言っていた。
戒はそう思いながら、伸ばした手の先にある小さな遺体を見つめた。
子どもが作れないハズのクローンの囲いの中に、赤子の遺体──死産だったのか、産まれてから死んだのかは解らない。
すでに水分も無く、軽い感触だった。
「!」
ヘッドセットの調子が戻ったらしく、戒はとっさにその小さな亡骸(なきがら)を掴み、コートのポケットに乱暴に詰めた。