踊れ その果てで

「あれがキミのお気に入り?」

 モニタールームで戒の様子を眺めながら、1人の男が青年に発した。

「うん」

 青年はその男を一瞥し、嬉しそうに再びディスプレイに目を向ける。

 ここは、広大な敷地にある『クローン牧場』と呼ばれる施設だ──首都の近くに空港の建設計画が持ち上がったが頓挫し、計画は廃止された。

 その土地を、とある組織が買い取り合法的ではないクローン作成を生業としている。

 違法であるにも関わらず、彼らが摘発される事は無い。

 そのクローン技術は高く、彼らを裏で支えているのは権力を握っている者たちだからだ。

 これほどの広大な土地を、一部の特殊な趣味の金持ちたちのために組織は『狩り場』として使用している。
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