キスしかいらない
力強く抱きしめられて、
びっくりしすぎて、
涙が止まった。

「・・・天久さん?」
「ハナちゃんのためだよ」
「・・・でも学校で、天久さん見ないよ」
「そりゃ理事長が、高校の校舎だけウロウロしてるわけにいかないデショ?」

あやすように、言われてまたカチンときた。
「子ども扱いしないで」
「してないよ」
「私、天久さんの妹じゃないんだから」
「わかってるって」

じゃあ、どう思ってる?
少しは、女の子として見てくれてるの?

「出会った時はまだ子どもだったのにね。
 まさかこんなに綺麗になるなんて思ってなかった」


どこか諦めたように天久さんが言う。

おそるおそる見上げると、鳶色の澄んだ瞳にみつめられる。
もうそれだけで、心臓が痛くてたまらない。

「ハナちゃん。
 妹じゃないから・・・心配なんだって。
 わかってよ」
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