キスしかいらない
プロローグ〜天久〜
みつけた。
理事長に就任したばかりの俺は、入学式の挨拶のために壇上に上がった。
祖父の代から一族で経営してきた、中学から大学までの学園。
28歳の俺が理事長だなんてふざけた話だが、ふざけているのは血筋だ。
初々しい新入生をはじめ、保護者やら在校生やら教員が、驚いたように俺を見る。昨年度までは親父が理事長だったんだ、無理もない。
快感。
そして、みつけてしまった。
口では入学祝いの挨拶をしながら。顔には笑みを浮かべながら。
俺は、ただ一人を見ていた。
柔らかそうなセミロングの黒い巻き毛。
遠目にも大きな瞳。
妹みたいに、可愛がってきた女の子。
俺、天久眞一郎(アマクシンイチロウ)は、目立つのが好きだ。
なのに、たぶんこのきもちだけは誰にも知られてはいけない。
理事長に就任したばかりの俺は、入学式の挨拶のために壇上に上がった。
祖父の代から一族で経営してきた、中学から大学までの学園。
28歳の俺が理事長だなんてふざけた話だが、ふざけているのは血筋だ。
初々しい新入生をはじめ、保護者やら在校生やら教員が、驚いたように俺を見る。昨年度までは親父が理事長だったんだ、無理もない。
快感。
そして、みつけてしまった。
口では入学祝いの挨拶をしながら。顔には笑みを浮かべながら。
俺は、ただ一人を見ていた。
柔らかそうなセミロングの黒い巻き毛。
遠目にも大きな瞳。
妹みたいに、可愛がってきた女の子。
俺、天久眞一郎(アマクシンイチロウ)は、目立つのが好きだ。
なのに、たぶんこのきもちだけは誰にも知られてはいけない。