身長差(仮)
001
君が守ってくれた
いつだって、君はそうだった。
小さい身長に悩む私。
小さい、小さい、と言って、周りから虐められた私。
だから、私は、意地を張っていた。
“小さくたって、良いことはたくさんあるんだ!”
そうやって、思っていた。
……ただ、思い込んでいただけなのかもしれない。
『そんなことして、お前ら、楽しいのかよ!』
運動神経も、普通。
頭も、凄く良いってわけでもない。
だけど、音楽が大好きな君。
一つひとつの仕種が、格好良かった君。
身長が、私よりも、ずっと高くて。
君は、周りの目も気にせず、私を庇ってくれた。
皆に対する優しさは、私に対する優しさ。
彼は、贔屓したり、偏見をもったような目で、決して人を見なかった。
強かった。
『なんで、そんな奴庇うんだよ!』
私は、この時まで、彼は良い子ぶっているんだと、ずっと思っていた。
『だって、おかしいだろ?
身長が低いからって、虐めるのは。
だったら、お前はデカすぎだ!』
私を虐めていた、長身の男子に、彼は言ってくれた。
『虐めて良い理由なんて、この世に無いだろ』
私の――皆の心を、強く揺らした。
良い子ぶっている感じが、全くしない。
眉を顰めて、真剣に言うんだ。
自分の友達にも、関わらず。
普通、良い子ぶっているだけの人は、そんな勇気が無い。
寧ろ、一緒になって虐めるのに。
ましてや、中学生なんだし。
『良い奴ぶんなよ』
『悪いかよ。
虐めなんて、低レベルなことしてるお前らより、よっぽどいいけど』
挑発のように、君が発した言葉。
それは、君からの、宣戦布告だったんだね。
私のために、そこまでしてくれた。