身長差(仮)
「良かった」
「う、うん……」
「これで、結城は大丈夫だから」
「……うん」
「あのさ、今度ライ――」
「黒崎!」
彼の言葉を遮り、彼の名前を叫んだ。
「……どうした?」
「どうして、庇ったりしたの?」
夕陽の光が、窓から差し込む。
「結城を?」
それは、彼の背中を、オレンジに染めた。
「だって、黒崎の友達が、いなくなるかもしれなかったのに……」
黒崎は、目を細めた。
「そんなん、結城と話せなくなるより、全然苦しくないよ」
「えっ……?」
逸らしていた目を、彼に向けた。
右の頬は、オレンジに染まっている。
左の頬は、ピンクに染まっていた。
「……あ、いやっ。
あはは、なーんてなっ」
冗談を言っただけか……。
……あれ?
どうして、がっかりしているんだろう。
「そっか。
あ……じゃあ、私は行くね」
「途中まで、一緒に行くよ」
そう言うと、黒崎は机から飛び下りた。
「……友達と、帰んないの?」
「部活、忙しそうだし」
「じゃあ、黒崎の部活は?」
「今日は、吹奏楽に取られてんだよ、音楽室」
「第二音楽室とか、使ったらいいじゃん」
『一緒に行くよ』
そう言ってくれた瞬間、胸が高鳴った。
やった――!
どうして……なんで?
何に、そんな喜んでいるの?
「吹奏楽は、人数が多いんだよ。
軽音楽と違って」
歌うことが好きな彼は、学校に軽音楽部があると知った。
――入学して、すぐのことだった。
私達は、幼稚園から、ずっとクラスが同じだった。
でも、幼なじみじゃない。
思い切り、親しいわけでもない。
だけど、もやもやする。